マイコプラズマ感染症

マイコプラズマ感染症(概説)

マイコプラズマ・ニューモニ-による感染症で 病原体は極めて小型のバイ菌です。

【呼吸器症状】としては、初期に発熱、咽頭痛、次いで咳が目立ちます、幼児では鼻汁・鼻閉も出現します。 発熱、咳などの症状が長く引くと レントゲン上に淡い影が出現することがあります、比較的元気が有ったり食欲があったり、診察所見も乏しいため、「異型肺炎」という肺炎に分類されます。 このタイプの肺炎は 小学生>中学生に多く認められますが、幼児から老人にも起こります。実際の感染者の大半の方は肺炎まで行かずにより軽い気管支炎で済んでいると考えられます。熱がない場合でもマイコプラズマ感染症の可能性は否定できません。

感染経路は 比較的濃厚な飛沫・接触感染です。

潜伏期間】は2-3週間です。

【治療】はマクロライド系(クラリスロマイシンなど)の内服が一番無難ですが、効かない菌も増えているため、2-3日内服して、発熱の経過から効果判定し、熱の低下がない時は効果に乏しいと考え、薬をトスフロキサシンやミノサイクリンなどに換えて処方します、効果があって解熱しても、咳は3-4週間続くことがあるため咳がしばらく続きますが、だんだん減ってきます。治療期間は最低1週間以上必要になります。

【合併症】中耳炎、喘息性気管支炎、多型滲出性紅斑 などはしばしば認めますが、複雑な機序により各種合併症をおこすことがあるのでしっかり治療することが大切です。

【予防】普段から流水と石けんによる手洗いをすることが大切です。感染した場合は、家族間でもタオルの共用は避けましょう。せきの症状がある場合には、マスクを着用するなど“咳エチケット”を守ることを心がけましょう。


マイコプラズマ感染症 (詳説)  

 【病原体】マイコプラズマ・ニューモニ-による感染症で 病原体は0.3μ程の極めて小型でセルロースの細胞壁を持たない不定形の長細い細菌で、代謝経路の多くを寄生する真核細胞(人間の細胞など)に依存し細胞内で増殖しますが、必要な栄養(ステロールやアミノ酸、脂質、核酸など)があれば細胞外でも増殖できる菌です。

 【主症状】主として呼吸器に症状が出、咽頭炎(6~59%)、鼻炎(2~40%)、気管支炎(気管支炎の代表的原因菌)、喘息様気管支炎、 肺炎(3~10%)、耳痛(2~35%)、その他副鼻腔炎症状などがあり、鼻炎症状の出現は本疾患では典型的ではありませんが、幼児ではより頻繁に見られます。

 異型肺炎(内訳約80%が小児、20%が成人)を起こす代表的原因菌の一つで(他にクラミジア、レジオネラなども 異型肺炎の原因菌です)、マイコプラズマ感染者の3-10%程度が異型肺炎・非定型肺炎になり、6歳~15歳の小中学生が罹る肺炎の中では60%程度の多くを占めます。異型肺炎というのは、高熱が持続したり頑固な咳嗽等が目立ち、胸部レントゲンを撮影すると-(多く症例ではスリガラス様)-肺炎所見を認めるものの、普通の細菌性肺炎で見られるような全身の重症感に乏しく、グッタリ感、倦怠感、食欲低下などは比較的軽く、経過のわりに元気があり、初期には胸部聴打診に異常が乏しい病態です。

 異型肺炎の典型的初発症状は発熱、頭痛、喉の痛みなどですが、3~5日経つと咳が出現し、当初は乾性のコンコンした咳で、経過とともに咳が徐々に強くなります、熱後も咳は長く(3~4週間)続いたり、特に年長児や青年で後期にはゴロゴロ痰の絡む湿性の咳となることが多く認められます。熱がない場合でもマイコプラズマ肺炎の可能性はあります。

【診断】抗体検査では2週間後に2回採血が必要なので、レントゲンによる診断や咳粘液のLAMP法か、PCR、immunoAGなどが簡便です。

【感染経路】 飛沫・接触感染です。学校などでの短時間での暴露よりも、友人間での濃厚接触によるものが重要とされています。

潜伏期間は2-3週間です。

【治療】の第一選択はマクロライド系内服剤(クラリスロマイシンなど)ですが、マクロライドが効かない耐性菌が増えています、PCR法ではマクロライド耐性が判定できるものがあります。

  内服剤を2-3日服用して『 解 熱 してくれば有効と判断します。咳は持続しやすいため治療が有効の場合でも咳はすぐには軽快せず治療の効果判定には使えません。内服2-3日で解熱傾向の乏しいときはニューキノロン系か、テトラサイクリン系に切り換えて治療します。内服期間は7日以上~が必要になります。

【合併症】中耳炎、喘息性気管支炎、多型滲出性紅斑(6~17%) などはしばしば認めますが、頻度の少ないものの慢性持続感染を起こしたり、肺外感染、交差免疫・免疫複合体等の免疫異常、血管炎などの機序により、関節炎、髄膜炎、中枢神経障害、ギラン・バレー症候群、血管炎、肝炎、膵炎、心筋炎、溶血性貧血、スティーブンス・ジョンソン症候群、腎炎などの稀な合併症を起こすことが知られており、しっかり治療することが大切です。

【予防】普段から流水と石けんによる手洗いをすることが大切です。感染した場合は、家族間でもタオルの共用は避けましょう。せきの症状がある場合には、マスクを着用するなど“咳エチケット”を守ることを心がけましょう。